大阪府内科医会からのお知らせ

クリニックマガジン3月号掲載(2015年)

大阪府内科医会 定例特別学術講演会


保険適応で広がるカプセル内視鏡検査のベネフィットと期待される将来


 大阪府内科医会(会長・福田正博氏)は1月28 日、大阪市内で『定例特別学術講演会』を開催した。2015 年は、同会の前身である大阪内科小児科医会が発足して65 周年、法人化10 周年の節目の年に当たる。冒頭を飾る月例の学術講演会を定例特別学術講演会と位置付け、夢のある話題として「カプセル内視鏡」が取り上げられた。A . アシモフ原作のSF 映画『ミクロの決死圏』をほうふつさせる現状報告に、知的好奇心の満たされる企画となった。(編集部)

特別講演
『カプセル内視鏡の最前線』
最先端技術で現実化した「ミクロの決死圏」

大阪医科大学医学部内科 主任教授 樋口和秀氏

 大内会・樋口和秀氏 (300x277) (2).jpg

小腸カプセル内視鏡の登場で
「暗黒大陸」から脱出

 小腸の病変診断は、胃や大腸の内視鏡(電子エンドスコープ)では届かないため、長らく経管小腸造影検査や腹部CT スキャンなどX 線診断に頼らざるを得なかった経緯があり、消化管疾患の中でも診断・治療に後れを取ってきた。その消化管疾患の病態生理を専門とし、内視鏡治療・カプセル内視鏡の第一人者として知られる樋口氏は、観察の難しさから「暗黒大陸」と比喩されてきた小腸の検査にカプセル内視鏡がもたらすベネフィットと適応症、さらに体外から操作できる自走式カプセル内視鏡の開発状況について詳しく説明した。
 小腸は、回腸と空腸などで構成され、消化した食物から栄養分や水分を吸収する。長さは成人で5 ~ 6 m前後に及ぶ。胃からも大腸からも到達しにくいため、内視鏡医が直接、接眼レンズやモニターをのぞいて観察することは困難を極めた。しかし、2001 年に小腸カプセル内視鏡が開発されて以降、世界的に臨床応用が進み、日本でも2007 年10 月から保険診療で使用可能となっている。
 加えて小腸カプセル内視鏡の登場とほぼ同時期に、日本でダブルバルーン小腸内視鏡が開発された。バルーンを交互に拡張させて腸管を固定する同内視鏡は、小腸の深部にまで挿入できる。この特質について同氏は「カプセル内視鏡で観察した上、バルーン内視鏡で生検や治療を行うというマニュアルができた」と「ペア使用」のメリットを指摘。診断アルゴリズムの変化を含めて報告したこれら小腸内視鏡の発展に伴い「特にNSAIDs およびアスピリンなど抗血小板薬が小腸粘膜傷害を引き起こし、出血の原因の一因になっていることが明らかになってきた」と薬剤リスクの解明にも寄与していると評価した。
 診断率は現在、カプセル内視鏡71.9%、ダブルバルーン内視鏡65.6%――。視野角が広がり、より鮮明になった画質でさまざまな情報を読み取れる第2世代のカプセル内視鏡がファーストチョイスされている。
 小腸カプセル内視鏡は約2cm でおよそ小指の第一関節ほどの大きさ。消化管のぜん動運動で進みながら小腸に達し、1秒間に2 ~ 3 枚のペースで写真を撮る。この間、患者は仕事や家事など普通の日常生活を過ごせる。朝に飲んだカプセル内視明した。
 小腸は、回腸と空腸などで構成され、消化した食物から栄養分や水分を吸収する。長さは成人で5 ~ 6 m前後に及ぶ。胃からも大腸からも到達しにくいため、内視鏡医が直接、接眼レンズやモニターをのぞいて観察することは困難を極めた。しかし、2001 年に小腸カプセル内視鏡が開発されて以降、世界的に臨床応用が進み、日本でも2007 年10 月から保険診療で使用可能となっている。
 加えて小腸カプセル内視鏡の登場とほぼ同時期に、日本でダブルバルーン小腸内視鏡が開発された。バルーンを交互に拡張させて腸管を固定する同内視鏡は、小腸の深部にまで挿入できる。この特質について同氏は「カプセル内視鏡で観察した上、バルーン内視鏡で生検や治療を行うというマニュアルができた」と「ペア使用」のメリットを指摘。診断アルゴリズムの変化を含めて報告した。これら小腸内視鏡の発展に伴い「特にNSAIDs およびアスピリンなど抗血小板薬が小腸粘膜傷害を引き起こし、出血の原因の一因になっていることが明らかになってきた」と薬剤リスクの解明にも寄与していると評価した。
 診断率は現在、カプセル内視鏡71.9%、ダブルバルーン内視鏡65.6%――。視野角が広がり、より鮮明になった画質でさまざまな情報を読み取れる第2世代のカプセル内視鏡がファーストチョイスされている。
 小腸カプセル内視鏡は約2cm でおよそ小指の第一関節ほどの大きさ。消化管のぜん動運動で進みながら小腸に達し、1秒間に2 ~ 3 枚のペースで写真を撮る。この間、患者は仕事や家事など普通の日常生活を過ごせる。朝に飲んだカプセル内視鏡と、携帯サイズの記録装置に送られた画像(8時間で5万枚)を翌日午後に回収するだけ。開腹手術と比較して患者の負担はないに等しい。胃カメラなどの内視鏡検査で苦痛軽減のために前投薬される鎮静剤や鎮痙剤なども必要ない。
 カプセル内視鏡が実用化された当初、クローン病などで小腸の狭窄や狭小化、通過障害の疑われる場合は、その箇所に引っかかってしまう恐れがあるため禁忌とされていた。しかし、2012 年7月、体内で崩壊して影響を与えないダミーのパンテシーカプセルが保険適用となった。カプセル内視鏡検査の前段階として患者にパンテシーカプセルを飲ませ、肛門から排出されるかどうか、排出されたカプセルの状態で「消化管の開通性」を判定する。カプセルが原形のまま、あるいはボディー部分が崩壊なし(両端のタイマープラグ部分が崩壊していてもボディーは固く原形をとどめたまま)で排出されると「開通性あり」と判定され、カプセル内視鏡検査が可能となる。一方、ボディー部分の崩壊(ボディーが変形して軟化)や全壊してコーティング膜のみが残った状態で排出されると、カプセル内視鏡検査は「不可」である。なお、狭窄部で滞留したパテンシーカプセルは自然崩壊する。
 小腸カプセル内視鏡の適応症は、これまで上部・下部内視鏡検査で「原因不明消化管出血」だったが、パテンシーカプセルを使用した開通性評価が保険適応となってからは、全小腸疾患に拡大された。

望まれる全消化管のマネジメントと未来に膨らむ可能性

 保険適応によってカプセル内視鏡検査が日常診療に広がる中、同氏は「全消化管をマネジメントする必要がある」と訴える。例えば、前記した抗血小板薬と消化管傷害に関する情報は、消化器科医に限らず、処方する各診療科で共有しなければならない。超高齢社会に移行した今、脳・心血管疾患で抗血栓療法を受ける症例は右肩上がりに増えている。中でも頻用されている低用量アスピリンは、食道から胃、十二指腸、小腸、大腸へと至る全消化管の粘膜傷害を引き起こす可能性が指摘されている。また、リウマチ患者に処方される非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs も同様の副作用が報告されている。「日本人に適した潰瘍の予防・治療法の確立」を訴求する同氏は、NSAIDs およびアスピリン投与時に「上部消化管のハイリスク群に対するPPI +一部の防御因子増強剤」「同ローリスク群に対する一部の防御因子増強剤」などリスク別の使用が望ましいと会場に呼び掛けた。
 カプセル内視鏡は現在、食道用、小腸用、大腸用の3種類が開発されている。胃は、袋状になっているため見落とす部分が多すぎるので実現に至っていない。うち、2014 年1月から保険適用が認められた大腸カプセル内視鏡は、大腸がんの死亡率の上昇する中、社会的な関心を集めている。保険適応は、①大腸ファイバースコピーを用いても腹腔内の癒着などにより回盲部まで到達できなかった患者、②器質的異常で大腸ファイバースコピーが実施困難と判断された場合に制限されているが、今後、大腸がんの早期発見につながる2次検査の選択肢として適応拡大が待たれている。
 大阪医科大学では、龍谷大学と共同で「自走式カプセル内視鏡」の開発を進めている。観察医が体外からカプセルを操作し、消化管のぜん動運動に任せず、自由に移動させられる設計。メダカの尾ビレのようにしっぽを動かす様子は、マスコミに「泳ぐ内視鏡」と紹介された。将来的に胃を含む「全消化管を数時間で観察すること」が目指されている。最後に同氏は、潜水調査艇を思わせる突き出したアームで生検・手術まで可能な自走式カプセルや血管内にも潜り込めるカプセルなど「未来型内視鏡」のイメージを示し、夢をいっそう膨らませた。

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