大阪府内科医会からのお知らせ

クリニックマガジン4月号掲載記事(2014年)

大阪府内科医会『第15回女性と医師が語り合う会』

 

「食生活」と「かかりつけ医を替える」をテーマに活発な討論

 大阪府内科医会は2月9日、大阪市内で15 回目を迎えた市民講座『女性と医師が語り合う会』を開催した。テーマは「楽しく食べて美しく健康に」。福田正博会長が食生活をテーマに講演したほか、グループディスカッション、パネルディスカッション、健康体操、ミニコンサートと多彩なプログラムが繰り広げられた。 (編集部)

 

診療所を替えるときも 遠慮せず紹介状を求めるべき

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 『女性と医師が語り合う会』は、単なる市民講座ではなく、参加した市民と大阪府内科医会の会員医師が率直に話し合う場として運営されている。

 今回は、福田正博会長の講演(囲み記事参照)に引き続いて、10 人程度の小グループに分かれたグループディスカッション、パネルディスカッションなどで市民と医師の交流が図られ、イベント終了後にはマンツーマンの個別相談の時間も設けられた。

 パネルディスカッション前半では、間食夜食、食事の工夫について各グループの報告がなされたが、参加した女性たちがそれぞれ間食や食事の方法、運動との併用など工夫している様子が示された。

 パネルディスカッション後半では、「かかりつけ医療機関を替える」をテーマにアンケート調査と討論が実施された。「われわれにとっては聞くのが怖いテーマだが、思い切って正面から取り組んでみた」(外山学副会長)という。

 患者が医療機関を替えようと思う理由では、「担当医との相性が良くない」など、医師との関連を挙げた回答者が最も多く、続いて医療機関のハード面への不満、スタッフへの不満が多く、ソフト面の不満は比較的少なかった。

 大阪府薬剤師会理事の近藤奈緒美氏は「薬局に内科医を替えたいと相談する例は少ないが、あるとすれば、やはり相性だろう。また整形、耳鼻科など単科と違い、内科医には何でもしてもらえるという期待が大きいことも要因かと思う」とコメント。市立堺病院糖尿病内科部長の藤澤智巳氏は「大病院を受診するときは必ずかかりつけ医の紹介状を持参して」と呼びかけた。

 続いて、医療機関を替わる際、紹介状が必要か否かの議論に移った。パネリストからは、診療所から診療所へ替わるときも「検査の重複を防ぐ意味でも、紹介状を書くように求めるべき。相談していただければ、その患者さんに合った医療機関を紹介できる」(理事・小林寿治氏)、「かかりつけ医は病気のデータだけでなく、ご家族の状況なども把握しており、家族の力になれる紹介状を書けるので、ぜひ相談を」(理事・大西洋子氏)などと、遠慮せず紹介状を求めることが提言された。

 『女性と医師が語り合う会』は、家庭において健康管理の中心になる女性を招いた市民講座として、現名誉会長の山家健一氏が発案し、15年前に立ち上げられた。閉会挨拶した山家氏は「どういう形式の市民講座にしたら良いか悩んだが、皆さんのご意見が直接、私どもの耳に入るように努力し、今のようなスタイルになった」と経緯を振り返り、市民、関係者、協賛メーカーへの謝辞を述べた。

 

福田正博会長講演「楽しく食べて美しく健康に」

 時間や順番を考えて量より質の食生活へ転換勧める

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会長の福田正博氏は「楽しく食べて美しく健康に」をテーマに講演した。はじめに同氏は、老化促進物質AGE(最終糖化産物)について解説。高血糖状態がタンパク質を糖化させてAGE を蓄積し、それが活性酸素を増加させる一因にもなり、全身の血管障害や皮膚、骨の老化、動脈硬化の進行に結び付くとした。

 それを防ぐには「血糖値を上昇させず、活性酸素を増加させない食生活」が重要で、特に脂肪酸の種類に気を配るべきだと述べた。動物性脂肪など飽和脂肪酸を避けて、オリーブ油、EPA/DHA など不飽和脂肪酸が望ましいことはよく知られているが、「不飽和脂肪酸の中でも人為的に加工したトランス脂肪酸はLDL- コレステロールを上げ、欧米では使用に制限が加えられている」と注意を促した。トランス脂肪酸はマーガリンやビスケットなどに多く含まれるが、最近はトランス脂肪酸含有量の少ないものも販売されているという。

 また、「最近は肉を避ける方もおられる。確かに動物性脂肪は良くないが、赤身肉は良い。肉を避ける食生活は筋肉量が減少して、サルコペニアや骨粗鬆症になりやすい」と警告した。さらに野菜は「1日350 g」の摂取が理想的で、「赤、黄、白、緑、青、黒」の野菜の色でそれぞれ含まれる栄養素が異なるため、彩り豊かに野菜を摂取することを勧めた。

 一方、炭水化物の摂取ではグライセミックインデックスを紹介。同じカロリーでも血糖値が上がりにくい食物があり、「基本的には白飯や白パンより、玄米や胚芽パンの方が血糖値が上がりにくい」と述べた。

 続いて福田氏は間食の取り方についてアドバイス。「食べるなら昼食後のデザートがお薦め。もしくは午後3時まで。食べた後はウオーキングや家事でエネルギー消費を」と述べるとともに、「手量りで片手に乗る程度の量にする」、「安くて量のある菓子を毎日食べるより、高くておいしい菓子を2日に1回にする」といった間食のコツを伝授した。

 また、清涼飲料水には多量の糖分が含まれるが、最近は野菜ジュースにも多くの糖分が含まれるものがあり、糖質0のビールも65~100kcalのエネルギーが含まれると注意喚起。

 食べる順番では、先にサラダを食べて後で白米を食べる方が、その逆で食べるより血糖値上昇が緩やかであることがこれまでの研究で示されているが、「最近の研究で、魚を先に食べてから白米を食べると、インクレチン分泌が促進され血糖上昇が緩やかであることが分かった」と紹介し、「子どもは味覚を育てるためこのような食べ方は勧められないが、大人なら野菜、魚、肉、炭水化物の順番が勧められる」と話した。また、「夜は脂肪をため込むBMAL-1 が増加し、脂肪を燃焼させる交感神経系の活動が低下するため太りやすい」と夜間の大食を戒めた。1日1,400kcal のダイエットで、朝食をしっかり食べた場合と、夕食をしっかり食べた場合を比較したところ、朝食をしっかり食べる方が、ダイエット効果が大きく、空腹感も少なかったとして、朝食重視の食生活を提案した。