大阪府内科医会からのお知らせ

クリニックマガジン11月号掲載(2013年)

大阪府内科医会定例講演会

泌尿器科医が性感染症診療をアドバイス

 

 大阪府内科医会は924日、定例講演会を開催し、萱島生野病院泌尿器科の山田博氏が『性感染症に対する実践的アプローチ』と題して診療の実態を示し、内科医へのアドバイスを行った。その概要を掲載する。また、後半では日本薬剤師会学術大会で大阪府内科医会泉岡利於副会長が発表した会員への医薬分業意識調査のポイントを紹介する。

 

性感染症診療では問診と

適正な抗生剤の選択が重要

萱島生野病院 泌尿器科部長 山田博氏 山田博 (200x133).jpg

 

 萱島生野病院(162床)は、大阪府門真市にある地域密着型の救急指定病院である。

泌尿器科部長の山田博氏は、同院に着任してから初めて多くの性感染症に接したが、こうした疾患の患者は大病院でなく、中小病院や診療所を受診する傾向があると指摘した。同院における直近3年半の性感染症診療実績では、受診者66人(男性62人、女性4人)で、内訳はクラミジア感染者39人(男性35人、女性4人)、淋菌感染者27人(全て男性)、混合感染者9人(全て男性)となっている。

同氏は『性感染症診断・治療ガイドライン』に記された診断・治療法とともに、臨床現場での実態を述べた。ガイドラインでは診断はグラム染色が淋菌にもクラミジアにも推奨度Aとなっているが、実際にこれが可能な施設は少ない。同院では尿PCR検査で診断を行っている。同氏は性感染症診療でも問診が重要であり、既婚か未婚か、風俗経験、他院での治療内容(とくに抗生剤投与)、排尿時痛(初期か終末期か)、膿、咽頭部痛、発熱、陰嚢症状などの聞き取りを行うという。風俗経験を積極的に話す患者はいないが、「昨日も○○地区でうつされた方が来られました」といった情報を与えると、話し出す患者も多いという。これまでの経験を踏まえ、同氏は淋菌感染者の3分の1にクラミジア感染が合併していること、あらゆる風俗において感染リスクがあることを報告した。

淋菌に対してはセフェム系のセフトリアキソン1gの静注がガイドランで推奨度Aであり、「これさえ投与すればほとんど治癒する」(同氏)という。ただし、大阪地区では「PCR検査等で淋菌が陽性でなければ査定される」と同氏は注意を促した。また、セフトリアキソン以外を投与した場合は、治療後の検査で淋菌陰性確認が必要であるとした。

一方、クラミジア感染症に対してガイドラインでは、アジスロマイシンが推奨度A、クラリスロマイシン、ミノマイシン、レボフロキサシンが推奨度B(ミノマイシンは保険適応外)である。アジスロマイシンは有効性に優れるが、下痢の副作用もあるため、同氏は先にレボフロキサシンを使用し、効果不十分ならアジスロマイシンに変更することが多いという。また、「クラミジアは治癒したかどうかが症状だけではわかりにくいので、PCRで必ず陰転を確認することが必要」と強調した。

さらに同氏は幾つかの症例によって、性感染症診療の留意点を示した。例えば、クラミジアは男性から女性へは100%近く感染するが、女性から男性に感染する確率は低い。妻が婦人科でクラミジア感染が見つかったとして、夫が受診した場合、ほとんどPCRは陰性に出るという。このような場合、同氏は精神的なフォローの意味で、「おそらくあなたが奥さんにうつしたが、あなたは治ってしまった」と説明するという。

同院での性感染症の診療は通常、初診時に検尿およびPCR検査を行い、何らかの抗生剤を投与、1週間後にPCR検査で感染が確定すれば、より適正な抗生剤を投与し、1~2週間後に再度PCR検査で陰性を確認する手順で行われる。しかし、同氏がクラミジア感染者の治療経過を調査したところ、総数21人中、治療後のPCR検査で治癒確定できたのは11人であり、「クラミジア感染蔓延を防ぐには治療継続が重要」と語った。

医薬分業に厳しい意見の医師が多い

―大阪府内科医会の医薬分業意識調査を日本薬剤師会学術大会で発表―  泉岡 (200x150).jpg

 922日の日本薬剤師会学術大会で、大阪府内科医会副会長の泉岡利於氏が同会会員の

医薬分業意識調査結果(有効回答数340)を発表した。

 

まず、院外処方を行っているかという質問では「ほとんど院外処方」と「全体の2~3割が院外処方」を合わせて50%弱にとどまった。ただ、ほとんど院外処方を行っている医師の4分の3は「院外処方で満足している」と回答した。

  院外処方のメリットとしては「仕入在庫負担の軽減」や「調剤の手間が省ける」、「患者さんに適した多種多様な薬が処方できる」などが上位の意見として挙 がった。一方、院内処方のメリットは「院外薬局まで行く手間が省ける」、「患者負担が少なくてすむ」、「鎮痛目的に抗うつ薬を使うなど本来の趣旨と違う処 方に際し、医師の処方意図に沿った説明ができる」などが上位の意見であった。

 ただ、「今後どう考えているか」を質問すると、全体の3分の2は具体的に、あるいは環境が整えば院外処方を考えていると回答した。個々の医師の自由意見では、「医療費の無駄使い」、「患者の意向に沿わずGEを押し付ける薬局がある」など厳しい意見が続出した。

  泉岡氏は「今のところ医師全体としては、医薬分業の流れは意識しているが、肯定的に捉える医師ばかりではない」と総括した。また、個人的な意見と断った上 で、「かかりつけ薬局は、処方せん通りに調剤して患者に説明するだけでは役割を果たしたとはいえない」として個々の患者・家族の健康相談に応じて適切に対 処するために、「薬剤師が多くのガイドラインやEBMを勉強して、患者の相談に応じやすい環境を創っていく必要があるのではないか」と提言した。